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エロロン・クエスト
深い肩胛骨のくぼみ。
薄い胸板、「ルパンIII世」に出てくる人みたいな細い足首。
彼よりあたしの好みを具現化している男の子なんて
彼のあとにも先にもいなかった。


バイト先の休憩室。
「・・・オレ今レベル11・・・」
聞こえてきた会話に思い切って口をはさんだ。
「ドラクエ? あたしも今やってるよ・・・」
ひ、ひかれるかな。
「おお♪ 今レベルいくつ? オレなんかもう。毎晩平均睡眠時間2時間よー」
やった。なんとも軽やかな返事が戻ってきた。
「へえー。ゲームやるんだ、意外〜」
外野のオンナ、うるさい。
こちとらおまえなんかアウト・オブ・眼中だから。
「コントローラ握ったまま、うとうとしちゃうんだよね。
 あのさ、レベル11なら教えてほしいとこあるんだけど・・・」

ここにバイトに入って3日目のことだった。
なんとかつかもうとあがいていた会話のきっかけは
実にあっさりと手に入った。ドラクエさまさまだ。
バイトあがるのは私のほうが1時間も早いのに
休憩室でだらだらと時間をつぶして彼があがってくるのを待つ。
「おまえさあ、せっかく早くあがったのにまだいるの〜?」なんて
からかい口調ながら「危ないから送ってやる」
いい男だね♪ もとい素直よね。もちろんそれが狙いなのよ。
すべてはあたしの思惑通りに進んだ。拍子抜けするほど簡単だった。
初キスはもちろん、バイト帰りの暗い路上だった。
彼の部屋に上がり込むまで一週間。
「帰りたくない」と発言するまでそこから3日。
彼のすらりとまっすぐな足と骨張った輪郭は本当に素敵だった。
大好きよ。もっとゆっくり楽しみたかったけどな。
かなり駆け足でここまで来ちゃった。

攻略済み。

いつも。
いつもここまで来るとやっぱり残念だなあ、って思う。
もっとゆっくり。もっとじっくり。
彼とセーシュンすればよかったかなぁ、って。
ごめんね、あなたをターゲットにして。
本当に本当に誰よりも好みだったよ・・・。
これまでで一番。たぶんこれから先もずっと。

ごめんね。
心の中でつぶやくと、あたしは彼の愛撫を受け入れ、
そして獲物をしっかりとくわえ込んだ・・・。


*  *  *  *  *  *  *  *  *


ドラクエももうVIIIかあ・・・。
あれから何年経ったんだろう?
あたしはファミコンで「ドラクエ」をやってた頃と
まったく変わらない18、19の少女の姿を今でも保ってる。
もちろんファッションとかはその時々に応じて変化してるけど。
今でも相変わらずファミレスやコンビニのバイトを転々としながら
今日もあたし好みの素敵な男の子を探してるの。
彼を越えるような男の子をね。



恐ろしいことにこんな未公開テキストが転がっていたのを発見してしまった〜。
江場中祭りに闖入してみる」の原文なのだわ。アプしはぐってたのね。時事ネタだったけどむしろ、はっきりとずれてしまった今の方がかえって読みやすいみたい。なので、臆面もなく今更アップ。厚顔無恥。
by midnight_egg | 2006-04-20 23:46 | 散文


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