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ポップアップ・ビーチ
ポップアートの海岸マグカップの明日にTB)

僕はクーラーボックスから

よく冷えたビールを二本取り出すと

ラベルの向きをきちんと揃えて白い塀の上に並べた。



それからリュックをあけて

ポップアップ・ビーチを取り出すと

よいしょ、と地面に押し広げたんだ。


僕の頭上に真っ青な空が広がって

真夏の太陽が照りつける。



白い砂も足の裏を焦がしてる。



僕は冷えたビールの缶を伝う

水の粒を人差し指でつー、とぬぐうと

プルトップをプシュッと開けた。



やっぱり夏はいいなあ。



一本目の缶ビールを、一気に飲み干した。



それから僕は、またリュックを開けて

今度は黒い犬を取り出した。



黄色いエア・ポンプで

シュコッシュコッと

空気を入れてすっかりふくらましてあげると

僕の犬は白い海岸を転がるように駆けだしたんだ。



僕はもう一缶ビールを開けると

口笛を吹いた。

でも犬は、僕のほうを見ようともしない。

波頭にキャンキャンと吠えついては

盛んに砂をほじくり返してる。


たぶん蟹かなんか見つけたんじゃないかな?

なんて思ってたら、犬の空気が抜けて

ぺちゃんこになっちゃった。


蟹だ、きっと。


僕は重い腰をあげると

ぺろんと地面に貼り付いた犬を拾い上げた。

砂をはらって、空気が抜けているところを

調べたけどよくわからない。

これは家に帰ってから補修しなくちゃだめだ。

僕はビールの残りを飲み干した。



それからポップアップ・ビーチを折り畳んだ。

海と白い砂浜と青い空が消えて

埃っぽい路地裏にたたずむ僕。



たたまれたポップアップ・ビーチは

折り目のところから裂けてきててだいぶくたびれかけている。

僕の夏もだいぶくたびれかけている。



犬と海岸をリュックにしまうと

僕は家路についたんだ。



書き割りじみた夕暮れの街を

ゆっくりゆっくりと



歩いて帰ったんだ。












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ある人がある人にインスパイアされて、とても気分のいい海岸の話を書いてたんだけど

本人はパクリだって言うのね。まったくパクリじゃなかったけど。

一方は言葉使い師で、一方はビジュアル・マスターなんだもの。

あれがパクリならこれなんかもっとパクリ? パロディ?

何かがすでにすり替わってしまってる。いい気分がすり替わっちゃってるんでなんだか悪いなー。とは思うんだけど。

つか、二人の仲のよさに水を差すようで何かなー、みたいな(汗。でもインスパイアされちゃったんだもん。

ポップアートからポップアップを連想した途端、あっという間にできちゃったんだもん。

ごめんね。

by midnight_egg | 2005-08-05 16:44 | 散文


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