カテゴリ:上清水賞参加作品( 4 )
第23976話・インスタントラーメン殺人事件
突然ですが【トラバでボケ清水賞】開催のお知らせ。に参加。


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コレは南海の孤島

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘で起こった密室殺人事件

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘で起こった密室殺人事件
解決した名探偵

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘で起こった密室殺人事件
解決した名探偵が食べているチキンラーメン

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘で起こった密室殺人事件
解決した名探偵が食べているチキンラーメン
同じ会社が作っているカップヌードル

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘で起こった密室殺人事件
解決した名探偵が食べているチキンラーメン
同じ会社が作っているカップヌードル
やっぱり同じ会社が作っている出前一丁

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘で起こった密室殺人事件
解決した名探偵が食べているチキンラーメン
同じ会社が作っているカップヌードル
やっぱり同じ会社が作っている出前一丁とは
違う会社が作っているチャルメラ

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘で起こった密室殺人事件
解決した名探偵が食べているチキンラーメン
同じ会社が作っているカップヌードル
やっぱり同じ会社が作っている出前一丁とは
違う会社が作っているチャルメラ
またまた違うライバル会社が作っている本来は「サッポロ一番味噌ラーメン」であるところの表記が誤っている札幌一番味噌ラーメン

コレは南海の孤島の中に建っている奇妙な館
同じ設計者が設計した雪の山荘で起こった密室殺人事件
解決した名探偵が食べているチキンラーメン
同じ会社が作っているカップヌードル
やっぱり同じ会社が作っている出前一丁とは
違う会社が作っているチャルメラ
またまた違うライバル会社が作っている本来は「サッポロ一番味噌ラーメン」であるところの表記が誤っている札幌一番味噌ラーメンの中に浮かんでいる南海の孤島


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「・・・で、これが? 」

「決まっているじゃないかね、入江くん。奇妙な歌、または詩・・・とくれば」

「見立て殺人ですね、上清水先生」

「ほう。君もなかなかわかってきたようだね。新作の構想だよ」

「一つめの殺人が南海の孤島の中に建っている奇妙な館で起こるわけですね」

「そしてほぼ時を同じくして同じ設計者が設計した雪の山荘でも密室殺人事件が起こる」

「当然その設計者ってあの人ですよね・・・」

「当然だ。そして密室を解いたかに見えた名探偵が死んでしまう。
 推理をしながら食べていたチキンラーメンに毒が盛られていたのだ」

「・・・まあいいでしょう」

「このあたりで奇妙な館と山荘からそれぞれロゼッタストーンが発見され、
 つなげて解読すると冒頭の歌が出てくる」

「それロゼッタストーンじゃないですから。
 ・・・要するに暗号が刻まれた石版かなんかが発見される、と」

「画期的だろう?」

「いえ、まったく」

「入江君、君は私を誰だと思っているのだね? 私はね、上清水だよ?」

「それを世界中でもっとも苦々しく思っているのは私です」

「画期的になるのはここからだよ、入江君。今すぐ日清食品にオファーを取ってくれたまえ」

「何言ってるんです」

「わからないかね?
 この小説はインスタント・ラーメンのパッケージにプリントして配信するのだよ!
 推理小説と非常用食料の融合!
 これさえ携帯していればいついかなるときに
 南海の孤島に取り残されようと雪の山荘に閉じこめられようと安心だよ」

「そのアイデアが画期的かどうかの議論は置いておいてでもですね、上清水先生。
 登場するインスタント食品5つのうち3つは日清食品、あとは明星とサンヨー食品が一つずつ。
 ラインナップのツメが甘すぎます。
 しかも自社商品に毒を盛られる、なんて話をパッケージに刷る食品会社は世の中にありません」

「そうか・・・ラーメンはムリかね。なら仕方がない・・・」

「あきらめましたか?」

「ふむ・・・よし!」

「なんです?」

「入江君、素晴らしい代案を思いついたよ」

「やれやれ」

「ふふふ・・・このラインナップこそが暗号だった、というのはどうかね?

 ”日清日清日清”これをカギとする。日を清らかに、つまり日を三回取り除くという意味だ。
 サンヨーは”サン=sun”と”ヨー”に分解。”明・星・sun・ヨー”から日を三つ除くと
 残るのは”月・生・ヨー”これを並べ替えると”月ヨー生”となる。

 つまり犯人は月曜日に生まれた者だ、ということを暗示しているのだよ、そして・・・」

「そして?」

「そしてこの小説はロゼッタストーンに刻んで読者に配信を・・・」


上清水の脳天に入江のダイビングブレーンチョップがクリーンヒットした。

【トラバでボケ清水賞テンプレ】
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by midnight_egg | 2005-08-24 13:00 | 上清水賞参加作品
【第一回上清水賞参加作品】月木のミステリィ(後編)
MS.PORKERFACEよりTB
月木のミステリイ(前編)を先にお読みください。



【月木のミステリィ(後編)】


「でもバンダナを巻いている犬なんかいっぱいいるよ。
 単に首輪の替わりなんじゃないかな?」と僕が言うと
「いいから書いておいて」とサチコさんはちょっと強引だ。

3.犬はなぜいつも赤いバンダナを巻いているのか

僕は逆らわずにノートにつけ足した。
いや、待て待て。まだあるぞ。

4.おじいさんと犬が駅前のベンチにいるのは月木だけなのか

5.もしそうなら、なぜ月木だけなのか

「ふむ、なかなかいいところに目をつけたわね」
サチコさんがほめてくれた、そのとき。
「タカシィー? いつまでも先生をお引き留めしちゃだめよぉー」と一階からお母さんの声がした。
ちえっ、タイムアップだ。

「それじゃ」サチコさんは立ち上がると瞳をクリっとまわして、いたずらっぽくこう言った。
「これは来週までの宿題ね。タカシくん、考えておいて」

*********************

サチコさんが帰ったあと、僕は再びノートを広げると5つの疑問を検討してみた。

1.おじいさんは駅前のベンチに座って、何をしているのか。

一番可能性が高いのは誰かを待っている、かな?
駅前なんだからその時間に電車から降りてくる人を待っている、というのが自然だろう。

僕はノートの1.の下に

・待ち人

と書いた。頭の中では「〜来たらず」という言葉をそれに続けた。慣用句だもんね。
まるで忠犬ハチ公だな・・・犬が一緒だからかそんなことも連想した。
さてお次は2.だ。

2.おじいさんはどうやって駅4つ分の距離を犬と一緒に移動しているのか。

これはカンタンだ。
電車には犬を連れて乗れない。
歩いたり、自転車で移動するには距離がありすぎるということだ。
それならば、犬と一緒に車で移動している。これが一番確率が高い。
おじいさん自身が運転して来るのか、誰かが乗せてくれてるのか、それはわからないけれど。

僕は2.の下に
・車
 A)自分で運転
 B)誰かが運転(知り合い? タクシー?)

と書いた。

3.犬はなぜいつも赤いバンダナを巻いているのか

これは難しい。だってやっぱり僕にはどうしても、そんなに意味がある疑問とは思えないのだ。
しいて考えるのなら、バンダナは首輪よりは目立つかな? 色が赤となれば尚更だ。
目立てばそれは何かの目印になる。

待て、待てよ。
もしもよく似た犬が2匹いて、どちらも同じようなバンダナをしていたとしたら・・・?
もちろん飼い主には見分けがつくだろうけど、
たまに道で見かけるだけのサチコさんには、犬の区別なんかつかないんじゃないかな?
サチコさんちのある駅と僕んちのある駅の近くにそれぞれに似た犬がいるとしたら
おじいさんだけが電車で移動しているとも考えられる・・・。

そこまで考えて僕はばかばかしくなった。
だって、何のためにそんなことをする必要がある?
ふたつの駅にそれぞれ似た犬をおいておいて、行ったり来たりするなんて。

僕は3.の疑問はそのまま保留することにし、4.の疑問に目を落とした。

4.おじいさんと犬が駅前のベンチにいるのは月木だけなのか

これは調べなきゃわからないな・・・。
5.は4.が前提条件になってるから、まず4.がわからないと検討できない。
今日は月曜日。明日とあさっての6時45分頃に駅前に行って調べてみよう。
そうすれば木曜日にサチコさんに報告できる。

僕はそこでノートを閉じると寝ることにした。
続きはまた明日。

*******************

僕は駅前のコンビニで雑誌を立ち読みしながら、
ガラス越しに改札口の前にあるベンチを見つめていた。
コンビニの時計はまもなく7時。昨日の晩と同じだ。
大型犬を連れたおじいさんはおろか、犬を連れた人すら影も形も見かけなかった。

そりゃそうだよな。
もし僕が犬の飼い主なら、散歩コースはこの人通りの多い駅前通りははずして
一本右手の公園に向かう街路樹の多い通りを選ぶだろう。
一方通行だから車通りは少ないのに、歩道はたっぷりしていて散歩には持ってこいなのだ。
まして今はラッシュアワーだ。何も犬を連れてゴミゴミした駅前にやってくる物好きはいない。

携帯が鳴った。
「昨日も今日も。いつまでどこをほっつき歩いてるのよ?
 もう夕飯の時間過ぎてるわよ!」
お母さんのとんがった声が聞こえてきた。タイムアウト。
僕はコンビニを出ると自転車にまたがった。

********************

待ちに待った木曜日がやってきた。
いつも家庭教師の日は夕飯は6時半までにすませるのが慣例だが、
僕は今日は駅前までサチコさんを迎えに行くことにした。
早めに夕飯をすませたい、というとお母さんはぶつぶつ言っていたけど、
知ったこっちゃない。

だいたい6時45分頃、僕は駅前のロータリーに自転車を乗り入れた。
いた!

確かに駅前のベンチにはおじいさんが一人すわっている。
そしてその足下には赤いバンタナを首に巻いた
小綺麗なゴールデン・レトリーバーがきちんとお行儀よくおすわりをしていた。

僕がそこまで見て取ったとき、サチコさんが駅の改札を出てきた。
サチコさんは犬を連れたおじいさんのほうに目をやると、軽く会釈した・・・ように見えた。

・・・気のせいかな?

それからサチコさんはこちらに顔をあげて歩き出し、
僕を見つけるとちょっとびっくりしたような表情をした。

********************

「それにしてもびっくりしたわ」
サチコさんは、くるくるとよく動く瞳をまたくりっとさせるとそう言った。
「まさか、タカシくんがわざわざ迎えに来てくれるなんて」
今日の勉強後のおやつも、また紅茶と甘納豆の取り合わせだ。
まったくどういうつもりなんだろう、お母さんは。

「確かに犬とおじいさんがいたね。とても綺麗なゴールデン・レトリーバーだった」
「あの犬、ゴールデン・レトリーバーというの?」
「うん、賢くてとっても人なつこくてあんまりほえない。
 盲導犬や介護犬にとっても向いている犬なんだよ」
「へえー、タカシくん、くわしいのねぇ」
サチコさんがすっかり感心している。僕はちょっと得意になってしまった。
でも僕が犬に、いやゴールデン・レトリーバーにくわしいのには訳があるんだ。

実は僕はずっと犬が飼いたくて、よく犬のことを調べている。
小さい頃は本なんかで見てたけど、最近はもっぱらインターネットだ。
特に最近のお気に入りがゴールデン・レトリーバー。
僕は犬が本当に飼えるようになったらそのときは
ゴールデン・レトリーバーにしようと心に決めている。

あれ? そうか、インターネット使えばいいじゃん。
「急にどうしたの? タカシくん」
「うん、ちょっと思いついたことがあって。調べてみたいんだ」

********************

僕のウチのパソコンは居間においてあって家族みんなで共有している。
下に降りていくとお母さんがパソコンに向かっていた。
サチコさんも僕の後ろから遠慮がちについてくる。
「お母さん、ちょっとパソコン使わせて」
「いやあよ。今更新してるんだから」
僕のお母さんはブログというのをやっている。タイトルは<美味しい味噌汁を作るぞ日記>という。
味噌汁ひとつで何をそんなに書くことがあるのかフシギだけど、まあ毎日更新してるみたい。
(みたい、というのはちゃんと読んだことないんだ、実は。)
月木、僕が家庭教師を受けている時間は、お母さんも集中的に更新ができるらしい。
「ねえ、お願い。すぐすむからさぁ」
「もう。・・・それじゃ、早くしてね」とお母さんはしぶしぶと席を譲ってくれた。
どうやらサチコさんの目を気にしたらしい。普段だったらこうあっさりとはいかない。

僕はダイニングの椅子をひとつ引っ張ってきて、パソコン用の椅子の隣に置きサチコさんを座らせた。
さて、インターネットを起ち上げ、検索の開始だ。
検索条件は僕の住んでいる市、駅名、病院、老人ホーム、療養所、エトセトラ。

どうやら、お目当ての物件がヒットしたようだ。

********************

部屋に戻ると「それでは発表します」と僕はノートを広げておどけてみせる。

「謹聴、謹聴」サチコさんもおどけ返す。
僕はすっかり探偵気取りで僕の推理を披露した。

「すべての謎は解けました。
 まず1.です。おじいさんは駅前のベンチに座って、何をしているのか。
 おじいさんは人を待っている。おそらく車でお迎えに来て、
 犬といっしょに、おじいさんの家まで送ってくれる人。
 あるいはタクシーを使うのかもしれないけど、それなら待つ必要はないかな?

 次に2.。おじいさんはどうやって駅4つ分の距離を犬と一緒に移動しているのか。
 これは僕は車だと思うんだ。まず行きはタクシーかなんかでおじいさん一人で来る。
 そして帰りはおじいさんの家の人、たぶん昼間はお仕事している人が仕事後に駅前まで、
 車でお迎えに来るんじゃないかな? ここまではいい?」

「うん、まあ。一応説明はつくわね」

「次の3.だけど、これはちょっとあとにまわすね。
 先に4.と5.だけど。おじいさんと犬が駅前のベンチにいるのは月木だけなのか。
 もしそうなら、なぜ月木だけなのか。
 これが、僕がさっきパソコンで調べていたのだけど」
と僕は一枚のプリントアウトを取り出した。
そこには「サンフラワー○○○ホーム」とある。
「これはあの駅前から歩いて5分、公園の近くにある介護型の老人ホーム。
 ほら、ココ。平日の午後の面会時間が午後2時半〜4時半(月・木は6時半まで)」
「月・木は6時半まで」サチコさんが繰り返した。
「そう、ずばり僕はおじいさんの訪問先はここだと思ってるんだ。
 でもなぜ、犬を連れてここへ行くんだろう?
 僕、前にTVで、老人ホームや療養所や病院に入院している人たちの所に
 犬や猫を連れて行ってスキンシップをすると、元気になるっていうのみたことがあって」
「うん、私も聞いたことがある。犬や猫をなでているうちに痴呆の方が
 言葉を取り戻したりするって。それで飼っている動物を連れて行くボランティアがあるのよね」
「そう。ここを見て。なんでこの老人ホームの面会時間が月・木だけ長いのか」
そこには「月・木 わんにゃんふれあいタイム・ボランティア募集中」とあった。
「ね。あのおじいさんはこの老人ホームにボランティアに来ているんだと思う。
 そして犬が赤いバンダナを巻いているのはね、
 目が悪いご老人にも犬の位置がわかりやすいように見えやすい色を選んで巻いているんだと思うんだ」
「うんうん」サチコさんが目を輝かせているのがわかる。
内心僕は鼻高々だ。

「そしてこれは蛇足なんだけど」
「うん」
「この老人ホームへ続く道は一方通行でしょ。
 おじいさんは車でお迎えに来る人がたいへんにならないように
 散歩がてら駅のロータリーまで来て待っているんだと思うんだよ。
 元気があってすてきなおじいさんだよね」

「はい、たいへんよく出来ました」
サチコさんはにっこり笑うと、右手の人差し指で僕の顔の前の空中に大きく花丸を書いてくれた。
やった。僕は顔には出さずに、心の中でやや大きく、
ガッツポーズを決めた。

<了>



第1回上清水賞・応募作品    presented by 小柴呉侭

私のその他の応募作はこちらのジャンルからどうぞ

上清水賞参加テンプレ
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by midnight_egg | 2004-10-03 21:00 | 上清水賞参加作品
【第一回上清水賞・応募作品】「遙かなる星の彼方の珍事」
第1回上清水賞・応募作品

「遙かなる星の彼方の珍事」   クレイジー・マメン


僕は目覚めるとまばたきで自分の認識IDを確認した。
いつもの決まり切った手順。
静かに顔上のパネルが持ち上がり、視界が明るくなった。

まぶしい・・・。
軽く目をしばたき『棺桶』から身を起こすと大きく伸びをした。
いつものように隣の『棺桶』に目をやる。
百年ぶりの目覚め。

隣のコールド・スリープ装置=通称『棺桶』には
生涯を誓い合った我が伴侶、
愛しい妻がまた目覚めたばかりのはず・・・・が。

見慣れたはずの恋女房の代わりに、
僕の目に飛び込んできたその小顔には
まったく見覚えがなかった。
大きく見開かれた瞳は深い碧。
陶器のようにきめ細かな白い肌。
ほんのりと薄紅を刷いたような頬が
だんだんと濃い朱に染まっていく。
薔薇の蕾のような唇が動いた。



「だ、誰? あなた」



・・・恒星間航行ロケット-memekurage1000-
このロケットの乗組員たる生命体は2体しかいないハズである。
すなわち僕ことオサム・ヤマナカ(3032歳)とその妻シオリ・ヤマナカ(3028歳)。

僕たちは地球から3万光年離れた辺境の星BANAMANの第三惑星BANAMAN-は星に
念願のマイホームを購入したばかり(本人達の体感的には)。
地球で暮らしていた蜂の巣型集合住宅USAGI-GOYA3002を脱出し、
ワープ航法とコールド・スリープを駆使した非常に非効率的な
引っ越しを敢行している真っ最中であった。
(マイホーム購入にほとんどの資金を使い果たしてしまったため
 瞬間移動装置運行機関CHIRIAKUTAの切符を買う余裕がなくなってしまったのだ)


夫婦二人きりの引っ越しの真っ最中。
・・・そうそのはずであった。


いかな中古のオンボロ-memekurage1000-といえども、
そこは恒星間航行ロケット。
広大な宇宙空間にあっては完璧な密室である。
そして先にも述べたとおり、
主として経済的理由から瞬間移動装置も装備していない。

しかるに。


今、僕の目の前にいるトランジスタ・ボディはいったいどこから現れたのであろう?
そして、僕の古女房・・・いや
愛しの伴侶はいったいどこに姿をくらましてしまったのだろう・・・?


「だ、誰なの? あなた」


目の前のキュートな肢体(言い忘れたがそのボディの92%は露出されている)の持ち主が、
もう一度、僕に尋ねた。


・・・訊きたいのは僕のほうだよ、まったく。

いったい何が起きたんだ?

(つづく)


教えてくれる? 悪魔さん。

応募用テンプレ
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by midnight_egg | 2004-09-26 21:01 | 上清水賞参加作品
【第一回上清水賞応募作品】闇雲館の謎
第1回上清水賞・応募作品

「闇雲館の謎」    小栗ばなな

【登場人物】
クサカ・ユウ(BAR)・・・私
シンドウ・ケイ(RING)・・・闇雲館の主人
ヤマサキ・ヒロミ(KEY)・・・チャット「パズラー?パズラー」の管理人
イシバシ・リン(上海)・・・チャット「パズラー?パズラー」の常連
カタオカ・カオル(バカラ)・・・チャット「パズラー?パズラー」の常連
モリ・ナオミ(CROSS)・・・チャット「パズラー?パズラー」の常連



バスを降り立ってからどのくらい歩いただろう。
私は今一度、鬱蒼と茂ってほの暗い小径で手元の地図を確かめる。
9月も末とはいえ、東京はこれほど涼しくはなかった。
いや、涼しいを通り越して肌寒いとさえ感じる空気に
むき出しの腕が鳥肌を立てて抗議し始めたその矢先、
視界がぽっかりと開けた。

薄暗い木々のトンネルの終点にあったのは
ほぼ正円に近い青々とした芝地。
そしてその中央に私の目的地である屋敷・・・・
「闇雲館」が鎮座していた。

私が目の前の屋敷を私の目的地「闇雲館」であると即座に断定したのにはわけがある。
・・・・その館は、代々の持ち主によって闇雲に増改築が繰り返されたため、
和と洋が奇妙に入り交じり、玄関を入ればいきなりそこがテラスで、
右手に現れた階段を上ればそこが風呂場。その脱衣所を通り抜け、
その先の寝室のドアを開けると現れる階段を下り、
六畳間の障子をからりと開けて縁側から、
花咲き乱れるパティオ風の中庭に降り立ち、
中央に位置する東屋の中にある地下への階段を下り、
石廊のような地下通路をひたすら進み、
突き当たりの布団部屋を抜けると現れるエレベーターに乗り、
降り立った先がようやく応接室である、
というような無秩序極まりない構造を持つという。

そのたぐいまれな館はその外観もすさまじかった。
なんだかわからないが、いらかの波から突然瀟洒な出窓が飛び出し、
煉瓦壁には縁側らしきものが張り出し、
それに被さるように生えた竹をまた蔦が覆うといった具合で、
全体としては目の錯覚を起こさせるような奇妙にねじれた構造を持ち、
見る者を不安にさせずにはいられないような醜悪さに満ちていた。

私をこの館に招待した人物はこの館の主人であるシンドウ・ケイ氏、通称RING氏である。
私とRING氏が出会い、意気投合するに至ったのはとあるチャット上でのことだった。
それでなければ、とても私と接点があったとは思えない人物である。

いや、それはRING氏に限らないであろう。
本来なら接点がない人物・・・今日この館に招待された5人のメンバーすべてに言えることでもある。
そのメンバーはみなチャット「パズラー?パズラー」の常連なのだ。
つまり今日はこの屋敷で「パズラー?パズラー」のオフ会が行われるのである。

この「パズラー?パズラー」というチャット・ルームは、
元来は一パズル愛好家によるHPに付随していたものだが、
管理人の人柄か、様々なパズル愛好家達が集う憩いの場となっていた。
管理人のKEY氏の本名はヤマサキ・ヒロミ。私がこの人物について知っている
プロフィールはたったこれだけである。職業はもちろん、年齢・性別をすら知らない。
ただし、この人物が主にロジック的パズルを得意分野とするが、
あらゆるパズルに造詣の深いオールラウンドプレイヤーであるということはよく知っている。
そう、今日この館に集まった者はみな、ベースはジグソーパズル愛好家であるが
それ以外にそれぞれが特化した得意分野を持っていた。
電子ゲーム系のパズルに強い上海氏(イシバシ・リン)、
カード・パズルの第一人者バカラ氏(カタオカ・カオル)、
クロス・ワードを得意とするCROSS氏(モリ・ナオミ)、
そして私ことBAR(クサカ・ユウ)はマッチ棒パズルやコインパズルを得意としている。

たかがマッチ棒パズルと侮るなかれ。
使い捨てライターが全盛の今日も、夜になればあらゆるバーのカウンターの上で
くり返し披露され続けている。世界中のバーのカウンターの上で。
古くから口づてで脈々と受け継がれてきただけあって奥は深い。
実のところ私の職業はバーテンダーなのだ。
職場で先輩やお客さんに教えてもらうにつけ、
生来のパズル好きが高じて気が付けば収集にまでに至っていたという次第。

そして先の館の主のRING氏は「知恵の輪」の収集家である。
たいへんな資産家らしく、本来なら博物館や美術館に飾られるレベルの
骨董品的な「知恵の輪」も数多く所有しているという。
特にコレクタ間の垂涎の的である「月と星」という知恵の輪を
RING氏が手に入れたいきさつは、彼がもっともお気に入りの話題であった。

「パズラー?パズラー」で互いに気心の知れてきた私たちの間で、
ちらほらと オフ会の話題が出始めた折りには、
この「月と星」を一目見たい、という希望もよく口に(?)出された。

そしてRING氏自身から彼の屋敷をオフ会の会場として提供したい、という
申し出がなされトントン拍子に話がまとまったのだった。
しかも氏の弁によればその屋敷もまた、パズル道楽故に購入した代物だというのだ。
私自身ここを訪ねることを、今日まで本当に心待ちにしていたのである。

今日出会う5人の仲間、RING氏、KEY氏、上海氏、バカラ氏、CROSS氏、については
KEY氏以外については、だいたいあたりはつけているもののやはり年齢も性別も定かではない。
それぞれ、どんな人物なのであろう。いよいよ皆とのご対面だ・・・

と、そのとき屋敷のほうから
「おおーーーーーーっっ!!!!!」と野太い男の悲鳴のようなものが聞こえた。
そして、ふいに玄関が開くと初老の男性が私の胸に飛び込んできてこう言った。
「つ、『月と星』がなくなったのです、ぬ、盗まれた・・・・!」
そしてその男性はそのままずるずると私の足下にくずおれてしまった。
私は男性を助け起こそうとした。
「ど、どうしました? しっかり・・・」
男性の腹に回した手のひらになま暖かい液体が触れた。
思わず放した私の手のひらは、まるで芝居のように嘘くさい血糊でべったりと濡れていた。
「ぎゃああああああ!」
私のシャツの腹の部分もまた朱に汚れている。

何が起きたのだ?
この男はいったい誰なのか!?

(つづく)


闇雲館平面図


-------この続きを知っている人物
それは一人しかいない。
そう、それはあの男?・・・・。

応募用テンプレ
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by midnight_egg | 2004-09-26 20:12 | 上清水賞参加作品