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月は見ていない
宇宙のどこかの片隅で。で開催中の「トラボケ 2008夏 レベル6」にトラックバック。


お題

薄暗い夜道を歩いていると、見知らぬ人物が前方に立ちふさがった。
その人物はコートをはだけ、何らかのブツを露出して、何らかの行為を行いはじめた。
さて、どう反応したものだろうか?




今宵新月。

 生温い夜風は足下を這い上がってくるアスファルトのいやな熱を強調しこそすれ、和らげてはくれない。しけた自動販売機が放つ薄白い光が夏の羽虫を静かに吸い寄せている。
 道の向こうから揺れるようにこちらに近づいてくるシルエットを認め、あたしは思わず知らず緊張して歩が緩くなる。自販機の明かりが中折れ帽を目深にかぶり、コートの前をしっかりとかき合わせたこの季節柄不自然きわまりないその姿を浮かび上がらせる。
 そして、すれ違い様その見知らぬ男があたしに向かってコートの前をはだけたのだった。

ああ。

では彼なのだ。
この男がそうなのだ。

 あたしはその男がコートの中から差し出したブツを迷わず口の中にふくんだ。舌の上のそれはゴムの感触に包まれている。
 私の耳元に低いささやきが響く。
「違う。入れるのなら下だ」

 あたしは右手をスカートの中に差し入れた。下着はつけていなかった。なぜならあたしは今日、この男に会うために自らの意思でここまでやってきたのだから。自分の指であたしはあたしにそっと刺激を与える。いくらなんでも乾いたままでは入れられない。でも、時間もない。素早くことをすませなければならない。あせればあせるほど、あたしはなかなか濡れなかった。自分で自分がもどかしい。指を深く差し入れ、そこを押し広げる。男のブツを口から吐き出すとまだ余り濡れていないそこにムリヤリ押し込んでいく。

奥に。

もっと奥に。
 あたし自身に押し返されるそれを奥に。痛っ。あたしの口からは思わずあえぎが漏れる。奥に。がむしゃらに押し込み続けてようやくそれはあたしの一番奥に届いた。

ああ

 あたしは指を離し、ためいきとも安堵ともつかない熱い息をつく。男はそんなあたしにはかまわず再び低い声で囁く。
「どこだ?」
あたしは黙って、ずっと左手に握りしめていたものを男に差し出す。
 コインロッカーの鍵だ。
「新宿JR西口地下」
あたしがそうつぶやくと男はその鍵をひったくるように奪い、あたしの背後に向かって一目散に駆け出した。深呼吸をひとつすると、あたしもまた男を振り返ることはせず、まっすぐ前を向いて男が走り去ったのとは逆方向に歩き出す。


 道の向こうから白い光が揺れながら近付いてくる。あたしの横で止まったそれは白い自転車で、濃紺の制服に身を包んだ初老の巡査があたしに声をかける。
「あの〜、恐れ入りますがね〜。この辺りで不審な男を見ませんでしたかねえ?」

「え? いえ・・・いいえ」
「そうですか。いやね、この辺りで見たって通報があったんでね、パトロールしてんですよ」
「えっ、ヤだ。こわいですね〜」
「女の人の一人歩きはあぶないよ」
「あ、はい、すみません。一応、防犯ブザーは持ってるんですけどぉ」
「あ、それはいい心がけだよね、でもね。それでもくれぐれも気をつけてお帰りなさいよ」
「あ、はい。ありがとうございます」

 あたしはあたふたと頭を下げ再び歩き出す。遠ざかるあたしの後ろ姿を人のいい巡査は見守ってくれているようだ。


少しでも。
この間に少しでも遠くに逃げてね。
つかまるようなヘマはやめてね。
もっとも帽子もコートも、もうとうの昔に脱ぎ捨ててはいるでしょうけど。

 そしてあたしはコンドームに包まれた末端価格グラム数十万円の白い粉をまるで胎児のように下腹部に仕込んだまま、法の手先から一歩また一歩と遠ざかって行ったのだった。あの緊張の一瞬に、コートを大きく羽根のように広げ私を包み隠してくれていた、そのくせあたしからは目をそらしていた、意外にも幼く見えたあの横顔を薄く淡く思い返しながら。


■□■□■□■□■□【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■□
【ルール】
参加:
 お題の記事に対してトラバしてボケて下さい。
 締切りは1つのお題に対し30トラバつく、もしくは次の金曜日夜中まで
 1つのお題に対しては1人1トラバ(1ネタ)とします。
 お題が変われば何度でも参加OKです。

チャンプ:
 お題を出した人が独断で審査しチャンプ(大賞)を決めます。
 チャンプになったら王様です。以下の特典と栄誉が行使できます。
  1.お題を出す
  2.言いたい放題な審査をする
  3.次のチャンプを決める
 何か困ったことがありましたら開催事務局までどうぞ。

企画終了条件:
 みんなが飽きるまで、もしくは開催事務局が終了宣言を告知した時です。

参加条件
 特になし!
 ※ 以下あれば尚可!!
 ブログをもっている。あるいはこれから作成する。
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 企画元     毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
 開催事務局  ボケトラの穴     http://trana88.exblog.jp/
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by midnight_egg | 2008-08-18 12:14 | トラバでボケましょう


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