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第4回トラバでボケましょう選手権講評【33の発明・2/3】(エントリーNo.12〜22)
講評【33の発明・1/3】(エントリーNo.1〜11)


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【はみ出した発明・3】


「やった! 遂に完成した。
 この発明は人類の歴史を変える!」

「それは何ですか?」

「永久機関だよ」

「え、永久機関!? 人類の夢とまで言われるあの?」

「これを一口飲めば」

「え? 飲みものなんですか?」

「永遠にたち続けるわけだよ」

「なんだか私の知っている永久機関の概念とはちょっと違うような」

「奥さんも大喜びだよ」

「やっぱりそういう方面か」




 12・いつもの朝。
A3ファイル(4)★
 冒頭の卵を割り入れるシーンから壁紙の描写あたり。うっとりとため息が出るような端正で美しい文章です。この作者の創作モノを読むといつも、他の人には絶対書けないような、ドキっとするような一行が必ずあるんです。これで本当にただの一ブロガーなのか? S氏にはニヤリとしました。(やっぱりエス氏かエヌ氏でないとね。)さてこの作品の中心になる発明品は、実はこれまでのトラボケ史上でも最多出場選手だと思うんです。いかに人々に愛されているかがよくわかりますね。それだけに料理が難しい。この作者はあるアイデアを加え、そのことによって起こる情景を丁寧な筆致で描き出していきます。 長くはないと思います。むしろ上質の短編小説のような作品世界に仕上がっています。いいなあ、この登校風景。本当に。


 13・Dr.StrangeLove
MS.POKERFACE(3<1>)
 まずタイトルがうまいですよね。すごく読みたくなる。私がお題を「ついに完成したぞ」ではなく「ついに完成した」と表記したのは、実は「ついに完成したわ」のパターンも読みたかったからなのです。そのへんわかってらっしゃる(^^。そしてさすがうまいこと言いの女王。一行一行、すべて無駄なく笑いに繋げています。しかしいつから自虐オチが定番になったんでしょう? あ、ご自分のことではない? えー。


 14・あらよっと。
僕は君の太陽だ!(1)
 いきなり戻ってきていきなり自分ネタで乗り切りました。久々に見たけどこのキャラと語り口、そしてそのパワーが唯一無二の強力さであることを再認識させられました。というかこの発明、読んだ人みんなが食指を動かしたようですけど(^^。そして作者はほんと一瞬でまた姿をくらましてしまったのでした。誰か次に見かけたときにはしっかり捕獲しておいてください。


 15・
しんぞぉのおんな(3)★
 「気がかりな夢から目を覚ますと」・・・冒頭からツボを突いてきました。長いと言ってもたかがブログのポストに収まる文章量のはず。なのにこの読後の充実感といったらどうでしょう? 壮大な大河ロマンを満喫した感じ。里中満○子作のよりabsinth作のほうが数段おもしろかったです。蜜・・・いやもう。エロいこと書かなくても色気のある文章を書く人なのにもう。極上にエロかったです、ゴチソウサマ。作者は「ボケていない」と言っていますが鼻を枕でつぶしてしまったのでこうなりました、というのは十分なボケ、というかでかいホラというか(笑。ただ「この人物の鼻が低くなる」というのに発明の要素はまったくなかったのでした、よくよく考えれば。最初そこに気付かずにうっかり優勝候補にしちゃうとこでした。(え? そこがボケだった?)


 この作品の最大のボケは実にさりげなく冒頭に置かれていました。・・・お題変わってるやん(笑。お題に答えていないようで答えてるかも。それは我々人類の共通の夢だと思うのです。
>——ざっく、ざっく、ざっく。——ざっく、ざっく、ざっく。——ざっく、ざっく、ざっく。
という文字列がなぜか視覚的に私のツボにはまりました。妙におかしい。そしてなぜかコメント欄のみなさんのツッコミがうまい。図らずも読者とのすばらしいコラボ作品に仕上がってしまいました。


 17・『寝覚めの悪い日』
与太話びより。(3)
 人類の歴史を変えた過去の発明品に光を当てて語るアプローチは他に誰もやっていないのですがむしろ正統派だといえます。前作同様、お題そのものは姪から叔父への問答という形で取り入れられています。これはうまい。だってこれから先ずっとこのパターンで書き続けられるのはまちがいないから(笑。この物語は那子のほのかな恋心をベースに進みます。今回はすわ、二人の心が通じ合ったのか?と思いきや、やはりそう簡単にはいきませんでした。だってうまく行ってしまったら連載終了だもの(^^・それでも少しずつ進展していく二人の物語を読み続けたいと願うのは私だけではないはず。物語が語られる場として企画がある、という転倒はすでにおきてしまっているので、あとはとことん語り続けてください。


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【はみ出した発明・4】


「やった! 遂に完成した。
 この発明は人類の歴史を変える!」

「またですか」

「ダイムマシン!」

「鼻づまりですか?」

「フランクリン・ルーズベルトの肖像を大量生産するマシン」

「そ、そんなもの誰が欲しがるんです?」

「肖像を裏返すとオークの枝と、オリーブの枝、そしてたいまつが」

「?」

「マシンを動かしてみよう」

----ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん、

「・・・ダイム(10セント硬貨)ですか?」

「三つの窓の絵柄が揃えば、ほら無尽蔵に」

「・・・スロットマシンですよね?」

「大もうけだよー、きみぃ」

「偽金製造器じゃないですか」

「あ、止まった」

「故障ですか?」

「ダイム切れ。補充しなくちゃ」

「補充するんかい!」



 18・「弱いところ。」
Mein Tagebuch(1)
 うわ! エロで参加ですか? まんまとわくわくしてしまった自分が情けないですが、それくらいわしづかみにされる冒頭でした。最初の一行って大切ね♥ タイトルも心憎いです。スリッパの描写の下りとかやっぱりうまいなあ、と感心してしまいます。シンプルだけど綺麗なオチです。 身に覚えのある人なら誰でも深く頷いてしまうに違いないですね。


 19・「劇薬の効果のほどは」
ふぇいく。(2)
 前半の主人公の緊迫感がリアルでどんな恐ろしい結末になるかと思いきや。一瞬にして反転した世界の腰砕け具合が素晴らしいコントラストを醸し出しています。筆力衰えず、ですね。一読したときはただ素直に笑えたのですが、再読しておや、と思いました。
>ボクの長年の思いが、ついにかなったんだ!!!
 これは伏線? しかし主人公がなぜそれを望んだのか、それに対する説得力がないような気がしました。私は筆者よりもいじめに対する拒絶反応が強いのかもしれません。前半部、相手役の不良にもう少し間抜けで憎めないようなところがあったなら、と思ってしまいました。


 20・人類の未来を変える。
徒然ならぬ人生(1)★

 素晴らしいです。お姉さんたちを薄着姿にしたい、という卑小な願い。それに対してあまりにも大げさな発明。マッドサイエンティストかくあるべしと思いました。テンポのいい会話体がさすがです。大オチもばかばかしいほどスケールが大きくて好きです。そしてテンプレあとの二段オチ部分でさらにこれでもか、とスケールアップ。いいですねー。そうそうこうでなくちゃ(^^。その時限装置で有名なメーカー名もぜひ入れて欲しかったですね。


 21・発明王
羊のトライアングル(1)★
 主人公を博士にしたSFっぽい設定の作品は数多くあるのですが、ここまできちんとSFらしく仕上げてある作品はほかにありません。マニアックなこだわりを感じます。博士の語り口がまともで落ち着いているのが生きていますね。レトリックにも似たしかしもっともらしい彼の理論を聞いていくうちに、いったい何が起きるんだろう・・・と、引き込まれていくことはまちがいなし。お題に呼応して綺麗に決まったラストの一行が素晴らしい。今大会参加作品中もっともきちんとお題に答えてる作品であるとも言えます。再読すると更に精緻な伏線が点在していることに気付かされます。
 この作品に関してはテンプレあとの二段オチはないほうがむしろボケ度は高かった。そこだけが惜しいです。


 22・どれが一番強いの?
SOFIA_SS(2)★
 場面・状況の設定がいいですね。研究員のプレゼンか、はたまた一発明家の売り込みか。コンパクトでウマイです。主人公のキャラクター がまたよくできていますね、一人称が「自分」とか。モノローグだけでどんな人なのかが浮かび上がってくる感じ。ラストが鮮やかでした。こんな幕切れは私には絶対書けないです。冒頭の役員秘書の登場シーンもきちんと伏線になっていたんですね。読後にタイトルの意味が初めてわかるようになっているのも洒落ています。


第4回トラバでボケましょう選手権講評【33の発明・3/3】(エントリーNo.23〜32+番外1)
by midnight_egg | 2006-05-01 22:19 | トラバでボケましょう


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